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徐々にパネリストには高度な専門的知見が要求されつつある。
それは良いことである。
単なる外交的妥協のみでGATT紛争処理がなされては、たまらないからである。
そんなのは初めからあって然るべきだが、何しろGATTは。
既述の如く片肺飛行を続けて来た。
けれども、GATT的プラグ了アイズムという、法律的・制度的側面をあいまいに処理する傾向は、段々に変わって来ている。
とくに右の法務部門が設けられてから、そこの職員が様々な形でパネリストを助けて来た。
そのことによるGATTパネルの質の向上は目ざましかった。
一九七〇年代の後半あたりから、パネルで処理される紛争、つまりはGATT二三条の紛争処理手続に待ち込まれる件数は急増して来ている。
全体監視システムとしてのGATT紛争処理手続さて、パネルが設置され、審理を経てレポートが出される。
ある国の貿易上の措置がGATT違反、つまりクロとされる。
だが、従来のGATTでは、それがGATT仝締約国(締約国団)の決定になるには、全締約国のコンセンサスが必要であった。
一国でも反対(ブロック)すれば、パネル報告は宙に浮く。
そうした場合も、たしかに若干はあった。
クロのパネル裁定を受けた国が、自らブロックするのである。
ウルグアイラウンドでは、それはやはり問題だということで、「コンセンサスーマイナス2」という方式も考えられていた。
紛争当事国たる二国を除いて、他の全締約国についてコンセンサスがあれば、パネル報告か全体の意思決定になる、ということである。
それからあとの事態の展開は後述する。
ともかく、コンセンサス方式によるハードルはあるが、全体の意思決定がパネル報告を支持する形で得られれば、GATT紛争処理手続は次の段階に入る。
相手国がクロとされたことにより、提訴して勝った側の国が、前者の国でとられた貿易上の措置によって被った損害額をまず算定する。
そして、その額をカバーするための措置を、例えばクロの裁定を受けた国からの輸入についての関税を上げる、等の形でとる旨の案を作成する。
だが、それについても、その措置をとってよいか否かにつき。
やはり全締約国(締約国団)としてのコンセンサスが、必要とされるのである(これを報復と呼ぶことに、私は徐々に抵抗を感じて米ている。
報復と仮りに。
言うとしても、それが全締約国によって「管理された報復」であることに、注意すべきである)。
もとよりそこでも、クロ裁定をパネルで受けた国によるブロックの可能性かある。
この最終段階まで発展したのは、一九五〇年代のアメリカーオランダ開の紛争が、たった一例あるのみである(オランダがGATT提訴をして勝った)。
多くのケースでは、パネル裁定につき全体意思決定がなされた段階で、クロ裁定を受けた国が問題の貿易上の措置GA(WO)の暮本枠組と問題点章第-63をとることをやめ、そこで紛争は終結することになる。
ウルグアイーラウンドにおけるGATT(WTO)紛争処理手続の改善。
多くの人々は、ウルグアイーラウンドにより、GATT(WTO)の紛争処理手続が大きく改善された、と言う。
私は、そうは思わない。
むしろ、逆であると考えている。
前記の「コンセンサスーマイナス2」方式の提案はいつの間にか消え、最終的には、[ネガティブーコンセンサス]方式が採用された。
実にトリッキーな表現である。
要は、一国でもパネル裁定(報告)を支持すれば、それか全体意思決定となる、ということである。
パネル裁定が全会一致で否決されない限り、つまり、ネガティブな方向でのコンセンサスのない限り、それが支持される、ということである。
そして、その後の提訴国(相手国に対するクロ裁定を得て勝った国)の側の既述の措置についても、それが認められるか否かにつき、やはりネガティブーコンセンサス方式がとられている。
他方で、ともすれば遅延しがちだったGATT紛争処理手続が迅速化される、等の改善はたしかにあったか、右のネガティブーコンセンサス方式は、「全体監視システムの崩壊」を意味する点で、重大な改悪である、と私は考え、主張して米ている。
クロスーセクトラルーリタリエーション。
もう一つの問題は、やはり一九九三年末のウルグアイーラウンド最終合意文書で認められている[クロスーセクトラルーリクリエーション]にある。
既述の如く。
「報復(リクリエーション)」という、アメリカの通商法三〇一条的な言葉はなるべく使いたくないのだが、まあよい。
要するに、米(こめ)問題で日本がクロとされれば、金融サービスでも半導体でも、全く違う分野での「報復」が認められているのである。
しかも、既述のネガティブーコンセンサス方式が基本ゆえ、アメリカがやると言えば、実質上白動的にこれか全体の意思決定になってしまう。
一〇〇億ドルの損害があるとすれば、総額においてそれに匹敵する貿易分野を、勝手に(まさに買物ゲームのように)選べるのである。
この場面での「全体監視システムの崩壊」は、極めて深刻である。
「クロスーセクトラルーリクリエーション」は、まさにアメリカの通商法三〇一条による一方的報復の仕方そのものである。
日米半導体摩擦の際に。
例えば電動工具といった殆ど関係ないはずの物のアメリカへの輸出について、高い報復関税かかけられた。
日本の半導体に問題があるなら、それ自体に報復関税をかければよいか、そうすると‐本からの半導体の輸入にかなりを依存しているアメリカのメーカー等が困ってしまう。
日本製半導体が高くて買いにくくなる第一章GA(WO)の基本枠組と問題点65が、他方、非日本製のものだけでは足りず、結局、アメリカでの半導体全体の価格が上昇心してしまう。
それは自分で自分の首を絞めるようなものだから。
別な物を(アメリカの業界の意見を聴きつっこ報復の対象とするのである。
かかる「たすき掛け式の報復」は、それ自体がアンフェアと言える。
物の貿易に関する従来のGATTで、「物(産品)」であれば何でも同じだから、総額で算盤勘定をあわせればよい、といった程度のことしか言われなかったことに、そもそもの問題がある。
実際にも、アメリカ・EC間で、とくにアメリカからドイツへの鶏肉の輸出につきEC側か一定の措置をとり、アメリカがそれを争ったケースがある。
正規のGATT二三条手続とはかなりニュアンスか異なるが、ともかくそれらしきもの(ある種の仲裁である)を経て、アメリカかトラックの関税をグンと上げたりした(「チキン戦争」事件)。
しかも、他の諸国が別段文句を言わなかったため、アメリカは他の諸国(日本を合む)との関係を含め、トラック(商用車。
乗用車と対比される)輸入についての高関税を維持して米ている。
そこにさらに、いわゆるワゴン車を関税分類上トラ。
クの方に寄せて考えるなどして、日本からアメリカへのワゴン車輸出を押さえよう、とされたりもしている。
「物」・「サービス」・「知的財産権」の貿易をすべて統括するWTOが設置され、その下に紛争処理システムも統合する。
という美しい発想は。
「クロスーセクトラルーリダリエーション」を認知させるための策略、としての面をも有するように、私には思われてならないのである。
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